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東京教会 判決文

 

判 決 文

在日大韓基督教会治理委員会は、聖書・在日大韓基督教会憲法・規則・戒規・裁判規定に基づき、教会の神聖と秩序を維持するために、提出された証拠等に基づいて慎重な審理をした結果、以下のとおり、判決する。

提訴人: 在日大韓基督教会東京教会 長老 全三郎・金日煥

控訴人: 在日大韓基督教会東京教会 担任牧師 金海奎

控訴人(上訴人): 在日大韓基督教会東京教会 長老 林栢生

主 文(懲罰の内容)

第1 控訴人金海奎牧師に対する在日大韓基督教会関東地方会治理部の判決を取り消し、控訴人金海奎牧師を「停職」に処する。

但し、控訴人金海奎牧師が下記の条件を履行して、東京教会の秩序が回復されていると判断される場合には解罰することもあり得るが、そうでない場合には、さらに重い懲罰を下すこともあり得る。

以下のすべての条件を満たす悔い改めの謝罪文を作成し、2015年度東京教会公同議会・関東地方会定期総会・2015年4月開催予定の総会常任委員会に提出すること。

ア)2013年4月7日に開催された臨時公同議会において、在日大韓基督教会憲法に規定されていない長老信任投票を強行して全三郎長老と金日煥長老の長老視務を解任に至らしめたことが総会憲法に違反していることを認め、謝罪すること。

イ)違法な長老信任投票に基づき全三郎長老と金日煥長老を視務長老として認めず、また、控訴中の林栢生長老を視務長老として認めないことにより、東京教会の信徒間に不信と混乱を招いたことを認め、謝罪すること。

ウ)東京教会の担任牧師であり、堂会長という教会の責任者としての職責にありながら、関東地方会及び総会の負担金納付を怠り、そのことにより関東地方会と総会に深刻な財政的影響を及ぼしていることを認め、謝罪すること。

第2 控訴人林栢生長老に対する在日大韓基督教会東京教会治理会の判決及び関東地方会治理部の判決を取り消し、控訴人林栢生長老を「停職」に処する。

罪となるべき事実

第1 控訴人金海奎牧師について

1 控訴人金海奎牧師は、2013年4月7日開催の在日大韓基督教会東京教会臨時公同議会において、長老信任投票を実施することが在日大韓基督教会の憲法に違反することであるとの信徒の意見を無視した上、独断的な解釈に基づき、長老信任投票を実施したうえ、過半数の信任を得ていない全三郎長老及び金日煥長老の視務解任を強行したものである。

2 控訴人金海奎牧師は、在日大韓基督教会憲法委員会が前項の長老信任投票が無効であり、同長老らの視務解任は無効であるとの憲法解釈をしていることに反して、同長老らの職務を認めなかったものである。

3 控訴人金海奎牧師は、2013年1月20日開催の在日大韓基督教会東京教会の公同議会において実施された長老選出選挙の開票を担当した林栢生長老が故意に不正開票を行ったことに対して、同年3月31日開催の堂会において、林栢生長老に対して「除名」の治理を行ったところ、その判決を不服として在日大韓基督教会関東地方会に控訴していることに関して、「被告人が控訴している場合にはいまだにその職務を失わない」との在日大韓基督教会憲法委員会の憲法解釈に従わずに、林栢生長老の視務長老としての職務を認めなかったものである。

第2 控訴人林栢生長老について

控訴人林栢生長老は、2013年1月20日開催の在日大韓基督教会東京教会の公同議会において実施された長老選出選挙の開票の際に、故意に不正開票を行ったものである。

懲罰の理由

第1 はじめに

本件は、2013年1月20日に開催された在日大韓基督教会東京教会(以下「東京教会」という)の公同議会において、長老選出選挙の開票を担当した東京教会の林栢生長老(以下「林長老」という)が故意に不正開票を行ったことを発端として、東京教会堂会が林長老を除名処分とし、さらに、開票作業に誤りがあったという東京教会の長老らに対して、2013年4月7日開催の東京教会臨時公同議会において、長老信任投票を実施したうえ、過半数の信任を得ていない全三郎長老及び金日煥長老に対する視務解任決議が強行されたことに関するものである。

本件に関して、東京教会の堂会長である金海奎牧師(以下「金牧師」という)に対する関東地方会治理部による起訴、関東地方会治理部の「免職」判決に対する控訴、林長老に対する同治理部の控訴棄却判決について、当治理委員会は、証拠書類、関係人からの聞き取り調査を行って慎重に審理した結果、関東地方会治理部の判決は、その懲罰内容がいずれも重きに失していると判断したことから、関東地方会治理部のそれぞれの判決を取り消したうえ、主文のとおり判決するものである。以下、詳述する。

第2 金牧師に対する関東地方会治理部の起訴、治理部判決及び林長老に対する東京教会堂会の治理、及び関東地方会治理部の判決の概要について

1 金牧師について

(1)関東地方会治理部による起訴の要旨は、以下のとおりである。

① 2013年4月7日開催の公同議会において、憲法に規定されていない長老信任投票を実施して憲法の精神に違反したこと。

② 関東地方会定期総会における東京教会所属の総代を独断的に選定したこと。

③ 2013年4月29日開催の関東地方会定期総会において、憲法委員会の有権解釈に反して、全三郎長老、金日煥長老、林栢生長老の総代資格を否定したこと。

④ 2013年4月28日に、翌日に開催される地方会定期総会の東京教会所属の総代を招集して、東京教会の公同議会の決定に従わない言動をした者を堂会において治理すると威嚇したこと。

⑤ 2013年3月31日の東京教会の治理堂会において、林栢生長老に対して出席要求をせず、弁論の機会を一切与えずに退場させたこと。

⑥ 本件に関して、上会(関東地方会、総会)の合法的指導に違反していること。

(2)上記起訴に対して、関東地方会治理部は、以下の理由により、金牧師に対する「免職」判決を言い渡した。

① 2013年4月7日開催の公同議会において、長老の信任投票の実施を指導したことは、憲法に規定されていない不法行為であり、長老再信任制を廃止した総会憲法の精神を恣意的に否定したこと。また、公同議会の招集公告時にその議題を明示していないこと。

② 2013年4月29日開催の関東地方会定期総会の席上において、全三郎長老、金日煥長老、林栢生長老らが視務長老であるとの総会憲法委員会の有権解釈(2013年4月22日付)を無視して、同長老らの地方会定期総会総代資格を否定し、未だに継続して、同長老らの視務を認めず、教会秩序を混乱させていること。

③ 2013年4月28日に、翌日に開催される地方会定期総会の東京教会所属の総代を招集して、「東京教会の公同議会の決定に従わない言動をした者は、東京教会の教会員ではない。堂会において処理する」などと発言して総代らを威嚇したこと。

④ 裁判過程においても悔改と改悛の情が見られず、情状酌量の余地がない。

2 林長老について

(1)東京教会堂会は、2013年1月20日に開催された東京教会の公同議会において、長老選出選挙の開票を担当した林長老に対して、不正開票を理由に「除名」の判決をもって治理を行う。

(2)東京教会の判決を不服として、林長老は、①起訴状の送付や出席要求もなく、起訴内容に対する反論の機会も与えられなかったこと、②9名の堂会員中、7名の開票に誤謬があるにもかかわらず、自白したという理由で控訴人のみが極刑の宣告を受けることは公平の原則に違反するとして、関東地方会に控訴。

(3)林長老の控訴に対し、関東地方会治理部は、林長老が不正開票を行って教会秩序を混乱させ、長老の品位を害したとして、控訴棄却した。

第3 金牧師の控訴理由及び林長老の上訴理由について

1 金牧師の主張の要旨

(1)金牧師は、東京教会の堂会長及び公同議会の議長としての職務を遂行しただけであり、被告人を金牧師個人としていることは治理部の誤りである。

(2)治理部の金根湜牧師は、第2回裁判時に偽証を行い、また、証人らを退場させると脅したりなどして、公正な審理を行っていない。

(3)治理部は、判決言い渡しの前に2名の治理部員が辞任しているにもかかわらず、関東地方会任職員会に報告することもなく、辞任した2名を除いた委員で治理部を維持したまま、判決を言い渡したのは、倫理的・法的正当性を失った治理部による違法な判決である。

(4)治理部の判決は、提訴人らが東京教会の公同議会の手続きの適法性についての行政判断を求めたことに対し、金牧師の犯罪行為を審理する刑事裁判にすり替えており、裁判の本来の目的を歪曲した。

(5)公同議会において信任投票を行ったのは、会員らの多数決によるものであり、その責任を担任牧師に転嫁することは理に反する。

(6)総会憲法には、「長老再信任をしてはならない」という規定が存在しないのであるから「現行憲法の規定にない不法行為」という判決は、成文法の原理を無視している。

(7)関東地方会の治理部の構成が視察部と同一になっており、審理及び裁判過程において、起訴と判決を共に扱っていることは現行憲法にない非常識的なものであり、不法行為である。

(8)現行憲法には、長老再信任の存廃に関するいかなる規定もなく、総会憲法精神を推測するだけの規定がない以上、憲法精神を理由に判決することになると、不文法主義につながる。

(9)2013年4月7日に開催された臨時公同議会招集公告には、「(不正選挙処理問題)に関連した後続処理」という議題を記載しており、同公同議会において教会員らの動議及び再請(承認)を受けて、長老全員に対する信任を問うことになったものであり、招集手続きに違反はなく、治理部が東京教会の事情を理解せず判決したものである。

(10)林長老は、堂会において治理したものであり、全長老と金長老は、公同議会において多数決で不信任されたものであり、堂会長として、また、公同議会の議長として、それぞれの決定に従っただけである。

(11)3人の長老の総代資格については、関東地方会第64回定期総会続会のための対策委員会(以下、地方会非常対策委員会)との議論の末、総代資格は認めるが東京教会の堂会及び委員会には入らないように合意したので、それを守ったにもかかわらず、地方会の治理部が今になって責任を問うは不当である。

(12)憲法委員会の有権解釈は判決ではない。有権解釈を参考にして裁判部が判決するもので、その判決を無視すれば罪になるが、治理部は、判決の結果を無視したのではなく、有権解釈を無視したことが罪であるという。これは、有権解釈の意味を誤解した判断である。

(13)総代らを威嚇した事実はない。

(14)担任牧師が教会を代表する総代らに、公同議会の決定に従わなければならないと頼むことは当然のことであり、良心の自由に反する事ではない。

(15)治理部は、被告人が裁判過程においても悔改と改悛の情が見られないというが、正当な弁論をしたのみであり、その正当な権利行使を問題にすることは偏頗的で、被告人の有罪を決めつけたうえでの裁判をしたことになる。

2 林長老の主張の要旨

(1)治理部の判決には全く理由が述べられていない。

(2)「除名」は、重い罪、または異端を理由に矯正が困難、または教会に不従順の時のみ科せられるべきであるという戒規4条6項に違反している。

(3)東京教会の堂会治理会の構成において、利害関係人である牧師、長老が含まれており、起訴状や堂会治理会への出席の要請もなく、反論の機会も与えられていないので、東京教会堂会治理会の判決は無効である。

(4)関東地方会定期総会続会のために、地方会非常対策委員会が長老視務を暫定的に留保するよう求められ、それに従っている。

(5)金牧師は、総会憲法委員会の有権解釈と地方会の判決に従わず、3人の長老が視務長老であることが確認されているにもかかわらず、堂会に出席したという理由で流会にし、諸職名簿及び教会要覧から削除するなど、いまだに総会の指導と教会に不従順である。

(6)教会を一つにしなければならない霊的指導者が不正開票事件を処理する過程において、違法な方法で処理したことにより、教会員を対立させ、2つに分裂させた罪は重い。

(7)不正開票を金牧師の指示で行ったことを自白し、全長老と金長老が提訴したにも関わらず、物証がないとして金牧師を起訴せず、実行犯だけ断罪している。

(8)不正開票事件とかかわりのある8名の長老は治理対象にされず、聖書的良心に基づいて告白し、謝罪した者のみを治理した地方会の治理部の判決は不当である。

第4 当治理委員会の判断

1 以上のとおりの当事者の主張及び関東地方会治理部の判決の正当性を判断する前提として、争いのない事実経過及び証拠上明らかな事実経過は以下のとおりである。

① 2013年1月20日

東京教会の公同議会において長老選出選挙を第3次まで実施

② 同日

東京教会の長老が2名一組で各集計作業、公同議会閉会後、長老候補者の一部が

再開票要求

③ 2013年1月27日

臨時堂会決議により、再開票不許可決定

④ 2013年1月28日

林長老が金牧師に不正開票を告げ、長老辞任と教会を出ることを告知

⑤ 2013年1月30日

臨時堂会を開催、林長老の不正開票告白、金牧師の指示によることも併せて告白、再開票実施

⑥ 2013年2月3日

臨時諸職会において、真相究明委員会発足、再開票要求者らが委員となる

⑦ 2013年3月3日

堂会において、真相究明委員会が2回にわたって行った再開票結果を報告

⑧ 2013年3月10日、同17日

諸職会において、真相究明委員会が再開票結果を報告

⑨ 2013年3月23日

林長老と金牧師ほか堂会員5名との協議

⑩ 2013年3月24日

4月7日の臨時公同議会招集案内

1)長老投票(1月20日)再開票結果報告

2)開票不正及び誤謬関連者達処理問題に関する堂会案上程

3)これと関連する後続処理

⑪ 2013年3月31日

堂会治理会において、林長老に対する除名決議(満場一致)

⑫ 2013年4月7日

臨時公同議会において、長老選挙不正に関する堂会の責任として堂会員全員の3ヶ月視務自粛案に対し、反対大多数で否決

長老の信任投票の動議に対し、3分の2以上の多数で可決され、直ちに長老信任投票が実施され、過半数の信任を得られなかった全長老及び金長老の視務解任決定

⑬ 2013年4月9日

林長老が関東地方会に控訴

全長老が金牧師を関東地方会に提訴

⑭ 2013年4月13日

関東地方会長から憲法委員会に対し、3名の長老の地位及び総代資格の有無について質疑

⑮ 2013年4月20日

金長老が金牧師を関東地方会に提訴

⑯ 2013年4月22日

憲法委員会の有権解釈

林長老については、起訴状の発送、治理会への出席要求なく、反論の機会を与えな

かったこと、堂会治理に対する控訴がある場合はその判決がなされるまで長老資格

を失わない

全三郎長老及び金日煥長老については、憲法に信任投票制度がなく、公同議会が長

老信任投票をしたことは無効であるから、視務長老資格を有する

⑰ 2013年4月29日

関東地方会定期総会において、金牧師が3名の長老資格・総代資格を否定したこと

により停会

⑱ 2013年6月1日

3名の長老の総代権を認めた上、定期総会続会

⑲ 2013年9月23日

関東地方会治理部による金牧師に対する起訴

⑳ 2014年2月13日

治理部員姜章植牧師、部員辞任

○21 2014年2月14日

治理部員許伯基牧師、部員辞任

○22 2014年2月18日

関東地方会治理部、金牧師に対する「免職」判決

林長老に対する「控訴棄却」判決

○23 2014年3月3日

金牧師、総会に対して控訴

○24 2014年3月17日

林長老、総会に対して控訴(上訴)

2 当治理委員会は、上記事実経過に対して、各当事者らの主張や提出された証拠に基 づいて、以下のとおりの争いのある事実関係に絞り込み、判断する。

すなわち、金牧師の主な控訴理由は、関東地方会治理部による審理手続の不当性と東京教会堂会による林長老に対する治理の正当性、臨時公同議会での長老信任投票の正当性に関する主張であり(長老の資格があるのか否か)、また、林長老の主な上訴理由は、東京教会堂会の治理手続きの不当性、同じく開票に過ちがあった他の長老との公平性に関する主張である。

しかし、当治理委員会としては、本件が2013年1月20日に東京教会において開催された公同議会における長老選出選挙の開票を担当した林長老が故意に不正開票を行ったことを発端とするものであり、その不正開票が、林長老が主張するような金牧師の指示(教唆)のもとに行われたものであるのか否かが最も重要な争点であると考えるが、関東地方会治理部は、この林長老の主張に関する調査を行いながらも、その判決には何ら言及することなく、その他の理由のみをもって、金牧師に対して「免職」判決を下している。

そこで、当治理委員会としては、この林長老が主張するように金牧師による教唆があったか否か、そして、不正開票を発端とする東京教会の堂会長である金牧師の事後処理(臨時公同議会での長老信任投票の実施)が適切であったのか否かについて、再度調査を行ったうえで判断するものである。

3 金牧師による教唆の有無について

結論として、金牧師が林長老に対して、不正開票を教唆したことを明確に裏付ける証拠はなく、その教唆の事実については不明である。

すなわち、まず、林長老は、2012年12月13日頃、金牧師から「今回の選挙で開票するときに混乱させてください」と、長老選挙時の不正を唆され、それに従ったと主張している。

しかし、その告白を聞いた他の長老らにおいても、林長老の告白に疑問を感じていたとのことであり、その他に、林長老が主張する金牧師の教唆を裏付ける明確な証拠は認められなかった。

この点、林長老は、金牧師がアメリカ在住の李澂然牧師との会話において、長老選挙を当初から混乱させることを計画していたなどという発言をしていることが明確な証拠であると主張するが、林長老と李澂然牧師との会話の中から、金牧師の教唆した事実や計画をしていた事実を認めることはできない。

そうすると、林長老が金牧師の指示(教唆)に従って不正開票を行ったものであることは明らかではなく、林長老の不正開票に関して金牧師の責任を問うことはできない。

なお、林長老がなぜ不正開票を行ったのか、誰かからの指示によるのか、あるいは、誰かと共謀して行ったのか、なぜ金牧師を巻き込もうとしたのかについては、当治理委員会が調査して認定すべき事実関係ではないと思料する。

4 東京教会で実施された長老信任投票の不当性について

既に述べたとおり、東京教会において、2013年4月7日に臨時公同議会を開催し、本件長老選挙不正開票に関する堂会の責任として、堂会員全員の3か月視務自粛案に対して、公同議会の多数の反対で否決されている。

そこで、公同議会の議長である金牧師は、堂会案に代わる解決案を問うたところ、信徒の中から長老信任投票の実施の動議が出され、他の信徒の再請により、直ちに長老信任投票を実施した。

この動議に対しては、ある信徒から憲法に反するとの意見が出されたが、金牧師は、総会憲法に長老の信任投票を禁ずる規定がないので、長老信任投票を行っても憲法に違反しないと答弁して、信任投票を強行したうえ、過半数の承認を得られなかった全長老と金長老に対し、直ちに、長老の視務を解任している。

この点について、金牧師は、控訴理由書において、総会憲法には、「長老再信任をしてはならない」という規定が存在しないのであるから「現行憲法の規定にない不法行為」という関東地方会治理部の判決は、成文法の原理を無視していると批判する。

しかし、逆に、成文法の原理からは、長老に対する信任投票が定められていない以上、成文化されていない信任投票を行う方が成文法の原理に反するというべきであって、金牧師の主張は誤っている。

しかも、現行の総会憲法第33条2項は、「長老の視務を解任しようとする場合は、公同議会で総投票数の3分の2以上の決議で勧告辞任することができる」ことになっており、その決議の意味は、勧告辞任を求めるための投票である以上、不信任決議案として提起され不信任票が3分の2以上となることを意味するのである。

ところが、4月7日に行われた東京教会の臨時公同議会において実施されたのは、不信任決議案ではなく、信任決議案として提起され過半数の信任票を得られなかった長老の視務解任であり、憲法の規定する投票行為の意味と基準を無視した不条理を引き起こしているのである。

なお、東京教会規則第22条「教会公同議会(処理事項)」においても、担任牧師や長老の解職を決議することを取り扱う事項は全く記載されていない。

従って、長老の視務解任は、この方法によって行われるべきであり、憲法に定めがない信任投票によって解任したことは、明らかな憲法違反であるというべきである。

さらに、金牧師は、総会憲法委員会による有権解釈も受け入れようとせず、3人の視務長老の資格を認めない態度を取り続けており、控訴理由においても、憲法委員会の有権解釈を厳しく批判している。

これは、個教会は総会を包括団体とし、総会の憲法を遵守しなければならないという憲法第9条に明らかに反していると言わざるを得ない。

金牧師は、臨時公同議会において、信徒らの動議に基づいて信任投票を実施したと弁明するが、堂会長として、全く無責任な弁明である。堂会長は、公同議会の議長として、公同議会を適法に導く責任があるというべきであり、明らかに憲法に反する議論がなされているときはそれを正す責任があるのである。

この点に関する金牧師の責任は極めて重いと言わざるを得ない。

5 金牧師の林長老、全長老及び金長老に対する対応の不当性について

既に述べているように、金牧師は、林長老が東京教会堂会治理会で「除名」判決を受けたこと、全長老及び金長老については、公同議会で過半数以上の長老信任を得られなかったことを理由に、3名の長老としての資格を全く認めず、関東地方会定期総会での3名の総代資格を否定し、定期総会を停会させるまでに至らしめている。

しかし、この3名の長老としての資格については、2013年4月22日付で総会憲法委員会がいずれの長老資格も認めるべきであるとの有権解釈がなされているとおりであり、金牧師がこの解釈を無視して3名の長老資格を認めなかったのは、著しく不当である。

6 林長老の不正開票について

この点については、林長老が良心に基づき認めていることであり、不正開票の事実は認められる。

この不正開票について、林長老は金牧師に教唆されたことが動機であると繰り返して主張しているが、既に述べたとおり、金牧師が林長老に不正開票を唆したことを認めるに足りる証拠はなく、林長老の主張は認められない。

また、林長老は、他にも開票作業に誤りがある長老は治理されず、自白した自分のみが治理されるということは不当であるなどと主張するが、単に開票作業を誤った者と故意に不正を行った者とは明らかに事情を異にするのであり、許されるべきではない。

さらに、東京教会の堂会治理手続きの違法性についても主張するが、1月28日には、金牧師に対して罪の告白と長老辞任の意向を明示し、その後の1月30日の堂会においても自ら不正開票を告白しており、その後は、連絡が付かなくしているなど、このような一連の流れからすると、林長老には弁明の機会は与えられていたと評価することができ、その懲罰内容は別に論じるとしても、東京教会堂会治理手続きに違法性があったと言うことはできない。

また、関東地方会治理部の判決において理由が明確に述べられていないのは事実であるが、その結論の背景には、当治理委員会の判断と同様な判断がなされていると思料されるから、この結論が左右されることはない。

第5 懲罰の選択理由について

1 金牧師について

金牧師は、在日大韓基督教会と宣教協約を締結する大韓イエス教長老会(合同)から派遣された宣教師として関東地方会に加入が認められた後、関東地方会から東京教会の担任牧師として委任を受けた牧師であり、かつ、堂会長である。その意味は、宣教協約に基づき派遣された在日大韓基督教会の憲法と、加入を認め委任式を挙行した関東地方会の規則を遵守し、委任を受けた東京教会の歴史を尊重し、教会の平和的一致に努め、地方会の円滑な交流の維持と発展、および弱小教会の援助などに模範的な行動を取ることが期待されていたのである。

にもかかわらず、本件問題とそれに関連する、総会と地方会における金牧師のこの間の一連の行動は、教会と地方会と総会の秩序保全から著しく逸脱してきたとしか言いようがない。牧者としてのそのような行動が、この間、在日大韓基督教会内の教会信徒および教役者の間にどれほど憂慮と心痛の祈りを広げる結果となってしまったかについて、金牧師は謙遜に思いを馳せ、主の前に悔い改めることが求められる。

在日大韓基督教会の106年に及ぶ宣教の歴史発祥教会であり、これまで在日の艱難辛苦の歴史の中で、総会においても地方会においても母(オモニ)教会として尊敬すべき多くの模範的な貢献を、愛をもってなしてきた東京教会の担任牧師であることの自覚の初心に立ち返ることを、当治理委員会は強く促す次第である。

このような観点からして、金牧師は、林長老の不正開票に関わりがあったことまで認めることはできないが、議長たる堂会長として、公同議会において総会憲法に違反する長老信任投票を行ったこと、再開票に至るまでの金牧師の判断と行動が今日の東京教会の混乱を招いていること、長老信任投票にかかわる長老の資格に関する憲法委員会の有権解釈に一切応じようとせず、対立姿勢を取り続けたことの責任は重大である。

金牧師は、当治理委員会の調査においては、長老信任投票を行ったことなどについては自らの判断が一部間違っていたことを認めるような発言をしているが、関東地方会治理部の調査においては、長老信任投票を行ったことや長老の資格を認めなかったことの過ちを認めようとはせず、総会憲法委員会の有権解釈を全く無視して、自己の判断の正当性に固持していた。

この点について、金牧師は、関東地方会の治理部を含め、他の関東地方会所属の教会・牧師との確執を問題にし、治理部の調査に対しても、治理部長の予断に基づく調査を問題にするが、仮にそのような事情があるとしても、総会の秩序に基づく解決によるべきであって、真っ向から対立を強めていこうという姿勢を取り続けることには疑問を禁じ得ない。

このような対決姿勢は、治理部の判決さらには治理委員会の判決に備えて、世俗の裁判にまで持ち込むための弁護士選任に関する諸職会の承認決議(2014年3月9日)まで済ませていることからも伺われる。

しかし、一方では、東京教会の一致に向けて林長老、全長老、金長老の堂会復帰を認め、今回の件が東京教会で再び問題化されないように努めること、その他東京教会の一致に向けた和解の努力を行うことや関東地方会および総会に対する正しい権利と義務を行使し、未納負担金の納入などその責任を果たせるよう努力すると回答していること、東京教会堂会は金牧師が赴任する前から分裂していたこと、関東地方会の人間関係(勢力関係)がこの問題の裏に微妙に反映しており、これらはすべて金牧師の責任とは言えないことなど、関東地方会治理部の判決後の事情を考慮した上で、関東地方会治理部の免職判決は取り消し、金牧師に反省を促す機会を与え、東京教会の秩序回復のために、主文のとおりに判決することが相当であると思料されるが、当治理委員会としては、金牧師が東京教会の秩序回復を祈願し、自ら辞任することを強く勧めるものである。

停職とは、在日大韓基督教会憲法第49条第1項に基づく堂会長としての権限、同第68条第1項の公同議会召集権、第69条第2項の諸職会召集権をはじめ、担任牧師としての牧会・宣教業務に及ぶものであり、在日大韓基督教会憲法第11章(第47条~第52条)に定める堂会は、宗教法人上の責任役員会を意味するので、控訴人金海奎牧師の停職期間中は、宗教法人「在日大韓基督教会東京教会」規則(以下、東京教会規則)に定める代表役員としての職務権限(東京教会規則第10条)も停止されるものとする。

従って、この停止された権限については、関東地方会が新たに派遣する臨時堂会長の権限に基づいて行われなければならない。

また、停職の期間については、無期限とするが、2015年4月予定の総会常任委員会までに、主文に記載されている条件を履行し、東京教会の秩序が回復されたと当治理委員会が判断した場合には、停職を解罰することもあり得るが、逆に、悔い改めと謝罪がなく、東京教会の秩序が回復されていないと認められる場合には、やむを得ず、免職の判決をすることも検討されることを付言する。

2 林長老について

いかなる理由があったとしても、不正開票を行ったことやそのことが原因で東京教会を混乱させていることについては罪を免れることはできない。

仮にそのような教唆が金牧師から実際にあったとしても、主イエス・キリストへの信従とは、即ち牧師への無条件の服従ではない。

牧師の牧会を心から愛をもって助けながらも、もし牧師が聖書の命じるところ(例えば「十戒」の第九戒「偽証してはならない」)から逸脱しかけることがあるならば、愛をもって厳しくいさめることこそが長老としての、牧会者に対する愛の一つの、欠かしてはならない在り方なのである。その分別もつかず理不尽な指示に盲従することは長老としての自らの未熟を露呈していることになる。

しかし、神の前に自分の罪を告白して深く反省していることを考慮し、主文のとおり判決することが相当である。

第6 結語

当治理委員会は、東京教会、関東地方会、在日大韓基督教会の神聖と秩序を維持するために、主文のとおり判決するものである。

2014年12月29日

在日大韓基督教会治理委員会

委員長  金性済

委 員  金必順趙永哲中江洋一

姜富子金成元白承豪

在日大韓基督教会

総会長  趙重来

書 記  李根秀

総幹事  金柄鎬

 

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