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在日大韓基督教会の宣教的使命

 

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在日大韓基督教会の宣教的使命 -荒野の50年を越えて-

在日大韓基督教会は、日本の植民地支配が始まる直前の1908年、東京に来ていた留学生による聖書研究会や祈祷会が出発点となった。  第一次世界大戦(1914~18)後、日本経済が好景気をむかえ、労働力が不足するに従い、多くの労働者が朝鮮から渡日し、関西地方を中心に全国に居住するようになった。これにともなって、朝鮮人への伝道も留学生から労働者へ、東京から全国へとその対象や領域が拡がった。国を奪われ、農地を無くし、生活の糧を求めて日本に来ざるをえなかった朝鮮人労働者は、ここでも蔑視され、差別の中での生活を余儀なくされた。教会は心の安らぎをおぼえ、故郷の消息や民族の痛みを分かち合う信仰共同体であり、祖国の解放を願う祈りと、朝鮮語や日本語を習得するための学びの場でもあった。

1934年には「在日本朝鮮基督教大会」創立総会が開催され、独立した教団を形成するようにまでなった。しかし、1939年、宗教団体法が成立するに及んで、「在日」朝鮮基督教会は存続の危機をむかえた。幾多の交渉を経て、1940年、「日本基督教会」へ吸収合併され、さらに翌年の「日本基督教団」成立時には第一部に編入された。これより1945年の解放を迎える時まで「在日」朝鮮基督教会という名称はなくなり、日本が太平洋戦争へと突入していく中で、同胞教会に対する弾圧は厳しさを増し、説教や公式記録は日本語使用を強制され、多くの信仰の先達が犠牲と苦難の道を歩んだ。  1945年8月15日は、神によって与えられた解放の日として記念するようになった。解放の時より50年を迎えるに当たり、過去を謙虚に振り返り、その歩みの中でわれわれと共におられた主に感謝し、今日における宣教的使命についての基本姿勢を示し、決意を新たにするものである。

●荒野の50年を越えて  在日大韓基督教会は、日本において民族解放を迎え、多くの同胞が帰国する中で、日本に留まった数名の牧師と300余名の信徒によって再建された。太平洋戦争中、多くの教会が弾圧の中で閉鎖に追いやられ消失したが、1945年11月15日、残された教会と指導者たちが創立総会を開き、強制的に編入された日本基督教団からの脱会を決議し、「在日朝鮮基督教連合会」を成立させ、1948年に「在日大韓基督教会総会」と名称変更を行ない、伝道に勤しんだ。

1950年に勃発した朝鮮戦争は、在日同胞社会に大きな痛手を与えた。その後、長い間にわたって在日社会は、イデオロギーによって二分され、南・北に分断された祖国の政治的な思惑に食い込まれた。在日大韓基督教会総会はこのような不幸な実態の中で、和解者としての責任ある態度を取れなかったことを深く反省するものである。  初期、在日同胞への伝道は、本国の長老教会とメソジスト教会の協力によって担われ、そこで培われてきた一致の精神は、解放後着実に引き継がれ、日本の教会をはじめ韓国や世界教会とのエキュメニカルな連帯を産み出した。在日同胞が日本に定住する過程で味わった耐え難い苦痛の癒しと、基本的人権の確保のための戦いの中で、隣人教会である日本の教会が示された一致と協力に対して深く感謝する。  在日韓国・朝鮮人にとって、解放後50年間は荊の道のりであったが、歴史は綿々と引き継がれ、一世の世代より二・三世の世代への世代交替の時代を迎えている。在日同胞は「定住外国人」として定着しつつある一方、日本国籍を取得した同胞や、日本の国際化による新しい滞日者と訪問者をも含んでいる。

このような状況の中で在日同胞のアイデンティティは、多様化している。この中でわれわれの教会は、新しい使命と役割を期待されている。また、在日同胞の苦難の歴史は、キリストの十字架における受難と類比できるものであり、真の和解を成就するための産みの苦しみであったと認識しなければならない。

今日、脱冷戦時代の世界は、新たな秩序を模索しており、新秩序の基礎は世界の全ての民族と種族集団が差別と不利益を受けることなく生きることのできる「共生」社会にある。したがって、教会は神の創造秩序の保全を期して、人類が共に生きる社会を創るために遣わされている。  今日、在日同胞社会は世代交替の進行、在日同胞の多様化、祖国の情勢変化などによって、旧体制から新しい変革が起きようとしている。また近年、急激に増えている新しい同胞の渡来は、在日同胞教会に新しい課題を与えている。伝統的に和解の信仰から成る宣教のビジョンを持つ在日大韓基督教会は、出身や立場の多様性にかかわらず信仰によって一致する共同体であり、その礎として据えた韓国・朝鮮人の民族と文化に堅く立つものである。

●新しい使命 われわれは、過去、民族抹殺の危機の只中でも先輩信仰者たちが殉教の精神をもって堅く守ってきた民族的信仰を受け継ぐ者であり、そのような信仰を育んできた教会を背負っていく者である。在日大韓基督教会は、神が支配したもう終末論的歴史の中に置かれているという、救済史的な歴史認識に立ち、復活の主イエス・キリストが語られたところの「地の果てにまで行き わが証人となれ」との命令に応答する教会の形成を目指している。この命令は、わが同胞をはじめ全ての人間の生きる場に福音の光を掲げることによって、人類が抑圧的な現実から解放されて全き自由を得るという信仰告白に立つものである。

在日大韓基督教会は、宣教的使命を具体的に実践するために伝道、教育、奉仕の各分野において、自己変革が要求されている。またこれらの宣教的な課題は、教職者のみならず信徒が積極的に参与することによってのみ達成し得る重荷である。とりわけ教会は、その奉仕や事業において地域社会に開かれなければならない。

今日、在日同胞社会が脱冷戦時代に備え新しい民族共同体の形成を目指している情況において、在日大韓基督教会は過去への反省に立ち、祖国分断の痛みを分かち合う新しい民族共同体を創るべく民族的使命に召されている。また、政治的なイデオロギーを越えたところの民族教育の可能性は、世界の多民族社会、とりわけアジアの多民族社会への民族的信仰の形成に関するビジョンにつながるものである。

在日大韓基督教会は、在日の歴史と現状を宣教的な使命として受けとめ、神の国へのビジョンを地球的共同体の中で展開しなければならない。  とくに冷戦構造の崩壊と共に高まっている少数民族や先住民の自決権運動、そして移住労働者の急増による多民族社会の出現は、在日韓国・朝鮮人の生きた歴史と経験に新しい意味をもたらしており、新たな使命を与えている。

●実践への課題 日本社会における福音宣教は、天皇制イデオロギー等によって負の歴史を残したままの日本の地に生きる全ての人々を救いへと導き、神の国への希望に繋がらせるものである。また「7・4共同声明」(自主、平和、民族大団結)や、「南北(不可侵)合意書」の精神を受け継ぐ4回にわたる東京会議は、民族統一運動への主体的な参与であり、民族的和解の実現に向かう宣教の過程である。さらに在日韓国・朝鮮人をはじめ外国人の人権の確立は、日本社会の民主化と国際化の内実であり、移住労働者や定住外国人および諸マイノリティの人権確立の上で先駆的役割を果たすことになる。  これらの宣教的ビジョンは、日本と祖国、そして国際社会にとって大切な意味をもっている。在日大韓基督教会は、以下に掲げる実践への課題に召されている

一、民族的なマイノリティ教会として、日本に散在している韓国・朝鮮人並びにそれに連なる人々に福音を宣べ伝え、イエス・キリストの救いに与らせることを最優先の目標としなければならない。このために自立した100教会の設立は緊急を要する課題である。そして青年をはじめとする次世代の指導者養成のための取り組みは、長期的視野をもってなされなければならない。 二、宣教的使命の重要さを認識し、在日同胞のみならず少数者が共に生きることのできる社会を目指す神学、教育の確立に取り組まなければならない。 三、移住労働者やアジアから農村に結婚のために来た人々への福音宣教に取り組むと同時に、日本社会における被抑圧者やあらゆる少数者集団と連帯して人権確立のための宣教に取り組まなければならない。 四、世界教会と母国南北の教会、さらに海外同胞のディアスポラ教会と協力して、平和統一と宣教の働きに取り組まなければならない。

われわれは、このような宣教的な使命が、「残りの者」(イザヤ10:23)を遣わして世界宣教の業をなそうとされる神の御計画にそうものであり、在日同胞社会と日本社会にキリストの愛を伝える喜びに満ちたものであると確信する。  三位一体の神の聖なる御旨が、われわれの生きる現場の中に豊かに成就されますように!

1995年10月11日 在日大韓基督教会第43回定期総会

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