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「共謀罪」に反対する声明文

掲載日 : [17-05-19]   照会数 : 3332

私たちは日本の帝国主義と植民地支配によって、朝鮮半島からこの日本の地に生活の場を探し求めてきた在日コリアンの子孫であるキリスト者です。私たちは今も差別と偏見の中で生きています。

政府与党がテロ対策を理由に国会に提出している「共謀罪」は、北朝鮮やIS国による脅威を煽り、全ての在日コリアンや日本にいるイスラム教信仰者を無理に結び付け、監視し取り締まろうとするばかりか、これまで以上に社会に差別と偏見を植え付けることになるという恐れを抱きます。法務大臣の“一般市民は、その対象とならない”とだけ繰り返される国会答弁においても、一般市民とは誰を意味し、また一般市民ではないことを誰が判別することができるのか。このことは国会においても疑問提起されています。日本で生きる外国籍者は市民として受け入れられ、一般市民として認識されているのかという疑問を拭えません。「共謀罪」はテロ対策にこじつけ、言論の自由、信教の自由を脅かし、日本で生きる全ての住民の間に深い溝を作り出します。

また戦前において「治安維持法」「協議罪」が乱用された過去があります。「治安維持法」は特定の思想を持った結社や、そうした組織への加入を処罰することを主な目的とし、これに加えて話し合いを処罰する「協議罪」を設けて組織加入などの実行行為以前から取り締まることを可能としました。そして実際、1941年7月26日、私たちの教団(在日本朝鮮基督教会)の京都南部教会と京都教会の牧師・信徒たちは、治安維持法違反として逮捕され、教会は閉鎖に追い込まれました。かろうじて残された教会においても、韓国語で聖書を読み、韓国語で讃美歌を歌うこともできなくなりました。このように治安維持法は、日本人ばかりではなく、在日同胞の独立運動、労働運動、社会運動、そして宗教活動をことごとく弾圧していったのです。

この歴史から学ぼうとせず、戦前の「治安維持法」「協議罪」の名を変え再び法制化し、先の「秘密保護法」や「安保関連法」のように、世論の反対を無視し数の論理によって、「共謀罪」を採決したことは民主主義の根幹をも揺るがす行為です。

さらに「共謀罪」によって刑法犯を含めて600を超える犯罪について適用し、実質的に取り締まるためには、さまざまな手続きの緩和が必要となります。刑事免責、おとり捜査(潜入捜査)、通信傍受法などがそれで、犯罪捜査という名を用いて多くの市民を監視し、処罰することが可能となります。この「共謀罪」が可決されるということは、日本が「夜警国家」となることを意味するものであり、憲法に定められている「基本的人権」をも侵害するものです。

人は時おり国や社会に対して不平や不満の声を発することがあります。しかしその声は抑圧され虐げられる者の嘆きの声です。為政者はその嘆きの声を聴き、その声の原因を取り除き、保護するために法を定めるべきです。その嘆きの声を取り締まり抑圧しようとする「共謀罪」に断固反対します。

2017年5月19日
在日大韓基督教会 社会委員会


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