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在日韓国人問題研究所(RAIK)

KCCJ人権シンポジウムを開催

掲載日 : [14-10-14]   照会数 : 9957







KCCJ人権シンポジウムを開催
 
10月12~14日、「外国籍住民の人権とKCCJの宣教」というテーマのもと、社会委員会・KCC・RAIK・西南KCCの主催で、第16回KCCJ人権シンポジウムが開催された。会場の在日本韓国YMCAには、地方会の社会部を中心に23人が参加した。
 
一日目、総会長の趙重來牧師が開会礼拝で、「あなたも同じようにしなさい」(ルカ10:37)と題して、キリスト者としてなすべき役割と使命について話された。そのあと、鈴木江理子准教授(国士舘大学)が「在日外国人の現在と改定入管法」について、詳細なデータをもとに「多国籍・多民族」化しつつある日本社会の課題を提起された。

二日目、許伯基牧師(関東社会部)が、聖書研究としてマタイ15:21~28を取り上げ、「少数者と出会い、使命を与えられる教会」について話された。それは、今後の宣教について示唆に富む話であった。次いで、李善姫講師(東北大学)が「移住女性の震災体験から問う日本の多民族・多文化共生の課題」と題して、震災前と震災後3年半に及ぶ調査・支援活動から見えてきた課題について提起された。
昼食のあと、在日三世の金哲敏弁護士(東京弁護士会外国人の権利に関する委員会委員長)が「ヘイト・スピーチと在日コリアン」と題して、ヘイト・スピーチとして表出されるデマと扇動、在日に対する社会的・制度的差別の構造を打破していくには、人種差別撤廃条約に基づく国内法が必要であることを力説された。
 
いずれの講演に対しても、牧会現場からの切実な具体的な質問と意見が出され、活発な議論が交わされた。三日目の全体会では、それらを踏まえて声明文を作成し、採択した。最後に、社会委員長の洪領晃牧師が「命を救う」(マルコ3:1~6)と題して、私たちの使命について力強く話された。
(報告:佐藤信行RAIK所長)


第16回KCCJ人権シンポジウム声明

在日外国人200万人時代を迎えた今、外国籍住民をめぐる法的状況は、悪化の一途をたどっている。日本政府による外国人管理制度は、2009年の入管法改定により、旧植民地出身者とその子孫である特別永住者と、それ以外の外国人である中長期在留者へと二分化して管理されることとなった。特に中長期在留者に対する管理では、住所地変更の届け遅れなど軽微な過失や、「配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6ヶ月以上行わない場合」など第三者による客観的な判断が難しい事由をもって、在留資格の取り消しという厳罰を下すことが可能となった。また非正規滞在者については、地方自治体による外国人登録制度の廃止と、法務省による外国人一括管理によって、「この地に存在しない人々」と見なされるようになり、公立学校への受け入れや母子手帳、入院助産、養育医療など、人間として必要最低限の公共サービスからも除外されることになった。さらに政府は、インターネットを用いた不法滞在外国人情報の届け出制度や、外国人雇用状況届け出の義務化など、市民をも動員した管理・監視体制を強化している。これらは、外国人の増加と定住化、日本社会の多民族化という現実が進行しているにもかかわらず、外国人を管理の対象としてみなし続け、対等な社会の構成員と見なさない、日本政府/社会の排外的な姿勢が色濃く表れている。
 
東日本大震災は、東北に暮らす移住女性たちが抱えてきた諸問題が可視化される機会となった。彼女たちの多くは、仲介型の国際結婚により「嫁不足」の過疎地域に嫁いできた「南北間型結婚」のケースであり、日本語や日本文化の教育の不足なまま、農漁村部の「嫁」という社会的・制度的ジェンダー規範を受け入れながら、不安定な経済的生活基盤の上に暮らしている。大きな年齢差のある夫に代わって家計を支えるケースや、定着を求めるあまり、あえて自分の民族性を捨てて日本名を名乗り、子どもに対しても日本語だけを使うような、強い同化指向に甘んじているケースも頻繁に見られる。これらの問題の解決のために、行政は移住女性たちが十分に利用可能な日本語学習や言語的な支援を保障するべきである。また彼女たちが本来持つ豊かな民族性や文化性を正当に評価し、彼女たちにその土地の文化的/制度的規範ばかりを押しつける構造を脱することの出来る配慮を行い、日本語力の如何にかかわらず、必要な公共サービスにアクセスできるようなシステムを構築することが緊要である。
 
2000年代中盤から表面化しはじめた在日コリアンや韓国、中国、北朝鮮に対するヘイトスピーチ(差別憎悪扇動)が、近年猛威を振るっている。2000年代前半から、在日コリアンを誹謗中傷する過激な憎悪表現が、インターネット上の俗語として定着しはじめた。これらはネットの世界にとどまらず、2000年代後半から現実社会へと流入をはじめた。特別永住や、社会を構成する外国人市民として当然の権利を「在日特権」とし、これらを在日コリアンから剥奪することを目的とする「在日特権を許さない市民の会(在特会)」をはじめとする排外主義的右翼団体が、大久保(東京)や鶴橋(大阪)などの在日コリアン集住地域や、各都市の繁華街、また朝鮮学校などで、聞くに堪えない差別表現を用いたヘイトデモを繰り返している。国連自由権規約委員会や人種差別撤廃委員会によって、これらの人種差別的状況に対する警告が、再三にわたって送られているが、日本政府は「必要な措置は現行法によって可能であり、『表現の自由』を萎縮させるような措置を講じるほど酷い状態とは思わない」という内容の回答を繰り返すのみである。一方で北朝鮮拉致問題やミサイル試験発射などの外交問題と、それにかかわる「国民感情」を根拠として、地方自治体による朝鮮学校への補助金打ち切りや、朝鮮学校高校無償化差別などの、行政による差別的な施策が行われていることも、看過されてはならない。
 
外国籍住民をめぐるこれらの状況を認識し、私たちは決意を新たにして以下の行動目標を設定し、その実践に注力することをここに決意する。
 
1.外国籍住民を社会の構成員と見なさず、犯罪予備軍または有用な使い捨て労働力として管理対象と見なす現行入管法の改正に、キリスト教諸教派・諸団体と協力して取り組む。

2.外国籍住民がこの地で生きていく権利が完全に保障され、外国人と日本人が共に生き、共に生かし合う社会を実現するために、外国人住民基本法の制定運動を継続する。

3.過疎地域の移住女性たちの人権保障と社会適応、住民サービスの適切な享受のために、行政が必要な措置を講じることを求め、またそのサポートのために働く。

4.今日本で繰り広げられているヘイト・スピーチが、「表現の自由」の範囲を大きく逸脱した許されざる人種差別であることを日本政府が認め、国連自由権規約委員会と人種差別撤廃委員会の勧告に従って、人種差別監視機関の設置および人種差別撤廃法の制定を行うことを求めていく。

5.ヘイト・スピーチや行政によるマイノリティ・バッシングなど、日本の人種差別の深刻さを世界の教会・キリスト者と広く共有し、世界のマイノリティと連帯しつつ問題の解決に当たるために、2015年11月に日本にて、世界のキリスト諸教派を招いて第3回「マイノリティ問題と宣教戦略」国際会議を開催する。

6.これらの活動をKCCJが推進していくため、在日韓国人問題研究所(RAIK)の維持と発展に物心両面にわたって協力する。
 
2014年10月14日


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