2015年 在日大韓基督教会・日本基督教団
平和メッセージ
「主はこう言われる。正義と恵みの業を行い、搾取されている者を虐げる者の手から救え。寄留の外国人、孤児、寡婦を苦しめ、虐げてはならない。またこの地で、無実の人の血を流してはならない。」(エレミヤ書 22章3節)
本年2015年はアジア・太平洋戦争の敗戦から70年となります。昨年、私たち在日大韓基督教会と日本基督教団は宣教協約30周年を迎え、今後さらに日本における平和の実現と、人々の命が守られ、安心して暮らすことのできる社会の実現を祈り、お互いの協力関係を深めていくことを確認しました。
私たちは日本に住むキリスト者として、日本で暮らすすべての人々が真に平和で安全な生活をすることのできる国であることを心から願い、聖書の言葉に聴きつつ、過去の日本の韓国・中国などへの侵略戦争と植民地化政策の過ちを謝罪し、私たち自身の罪の悔い改めの祈りをもって、平和と平等と共生の社会の実現を目指します。
<平和な社会の実現を目指して>
今、日本国政府は、自衛隊を海外の戦争に派遣して軍事行動をとらせることを可能にする安全保障関連法案を閣議決定し、その制定を目指しています。その方向性は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と謳った日本国憲法第9条をないがしろにするものであり、集団的自衛権の行使は日本に住むすべての人々の命と生活の危険を増すものです。
敗戦から70年の今年、私たちは、軍民併せて20万人以上の犠牲者を出した沖縄戦のことを思い起こします。日本は独立国家であった琉球王国を侵略・統治し、アジア・太平洋戦争末期には本土の盾として利用しました。その沖縄は、敗戦後から今日に至るまで在日米軍基地の圧倒的集中という重い負担が強いられ、今は米軍普天間飛行場の辺野古への移設計画が「粛々と」進められています。ここに、この国の恐ろしいほどの「差別性」がはっきりと表れています。
以上のことから、私たちは、聖書において啓示されている主イエス・キリストの父なる神のみこころである平和の実現を心から祈りつつ、上記法案の制定に反対し、さらに、米軍普天間飛行場の辺野古への移設計画の撤廃を求めます。
<ヘイトスピーチのない社会を目指して>
「嫌中憎韓」の流れの中にあるヘイトスピーチをめぐる状況はこれまでと変わることはなく、むしろ、一般の人々の意識の中に定着しているという意味で、より深刻になっています。ヘイトデモの集会は今でも日本各地で行われていますし、ヘイトスピーチの対象は韓国、中国を越えて、沖縄、アイヌ、原発事故被災者、イスラム教徒、さらに、被差別部落、障がい者、生活保護受給者などにも及んでいます。
また、一部の報道機関は、「嫌中憎韓」を煽る記事や番組を報道し続けていますし、出版社同様、インターネット上には見るに堪えない人種差別的表現があふれています。日本は、1996年に国連における人種差別撤廃条約に加入しましたが、人種差別を禁じる法の制定や国内における人権機関の設立は兆しすら見えません。さらに、それらの動きは保守政治勢力と結びついて、日本軍「慰安婦」の存在自体を否定する「言論の弾圧」という新たな様相を見せ始めています。
このような中で私たちは今年11月、「共に生き、共に生かしあう日本社会に向けて-日本と世界の連帯でめざす日本社会の正義と共生」の主題のもと、第3回「マイノリティ問題と宣教」国際会議を開催し、日本における人種差別の実態を明らかにし、その撤廃に向けて、日本と世界のキリスト者が祈りと力を合わせていくことを願っています。
<人々の命と暮らしが守られる社会を目指して>
2011年3月の福島第一原子力発電所爆発事故後の政府の対応は、「国民の安全を守る」ことを第一とするものではありませんでした。放射性物質拡散被害シミュレーションの結果は隠蔽され、事故から数日後には被曝基準値や食品放射能基準値が大幅に引き上げられました。実際は、放射線量がかなり高いと言わざるを得ない地域の住民に対しても、移住や避難といった抜本的な手当が無いままに放置されてきました。そして、放射能汚染とそのストレスによる多くの健康被害が報告されているにもかかわらず、それらに関する報道は極小化され、今や鹿児島の川内原子力発電所が稼働されようとしています。
さらにそのような中で東京オリンピックの開催が決められ、「原発事故は過去の話」とばかり、各地の原発再稼働に向けた動きが進められております。
私たちは、世界で唯一の被曝国である日本が、「ヒロシマ」「ナガサキ」と共に「フクシマ」で起こったことを決して忘れず、その苦しみを共に担いながら、日本に住むすべての人の命と暮らしが守られる社会の実現のために取り組みます。