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外国人在留管理制度強化に反対する抗議声明

掲載日 : [09-07-09]   照会数 : 2540

外国人在留管理制度強化に反対する抗議声明

2009年3月、日本政府は「外国人登録法」(外登法)の廃止を含む「出入国管理及び難民認定法」(入管法)改定案、「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」(入管特例法)改定案、「住民基本台帳法」(住基法)改定案を国会に上程した。そしてこれらの改定案は、自民党・公明党と民主党の修正協議を経て、十分に議論されることすらないままに6月19日に衆議院で、また7月8日には参議院で可決された。
この一連の法改定の目的は、「外国人の公正な管理」とともに「適法に在留する外国人の利便性の向上」とされている。しかし、その本質は在日外国人に対する監視・管理を強化することにあることは明らかである。私たち在日大韓基督教会青年会全国協議会(以下、全協)はこれまでこうした反共生の動きに対して声をあげてきた。こうした歴史的歩みの中にあって、私たちは今回の事態を看過することはできない。

この法案改定によって導入された新たな在留管理制度は、中長期在留者に対して在留資格・在留期間・就労制限の有無などの在留情報を明記した「IC在留カード」を交付し、このIC在留カードの常時携帯・提示義務を刑事罰付きで課している。これらの情報は本人の届け出のほか、学校・職場などにも離脱や移籍の情報を提供させることになり、それによって中長期滞在者の日常生活に関わるあらゆる情報が法務省入国管理局に集中され、在留資格取消や在留期間更新などの審査に逐一利用されることになる。

また今回、外登法が廃止されるにあたり、外国人も住民基本台帳に入り、行政による各種サービスが提供されることになった。その限りでは前進がみられた。しかし、この住民基本台帳への編入は中長期在留者と特別永住者にのみ適用されるため、さまざまな理由で在留資格を持たないながらも日本に生活する非正規滞在者や難民申請者は、制度上「見えない存在」とされ、人が人として生存しうる最低限の制度的保障からも排除されかねなくなっている。

他方、旧植民地出身者とその子孫である特別永住者には「特別永住者証明書」が交付され、中長期滞在者とは別の形での管理がなされることになる。なお与野党の修正案で特別永住者の常時携帯義務に関する規定が削除されたことは一部では「大きな前進」とされたが、IC在留カードの受領義務・提示義務及びこれらに伴う罰則は維持されており、特別永住者の権利状況が改善されたとは言いがたい。さらに今回の改定入管特例法において新たに導入される「みなし再入国許可」制度は、「有効な旅券」の所持を要件とするため、特別永住者のうち「有効な旅券」を持たない朝鮮籍保持者が差別的取扱いを受けることは想像に難くない。

このように新たな在留管理制度は、在日外国人にさまざまな分割線をひき、日本国家にとって適合的な外国人を選別したうえで「利便性を適用」するものとなっており、またその「適合性」も法務省により逐一審査・管理される厳しい体制のもとにおかれることになる。さらに法務省に集中される在留管理情報は、外国人の入国時における指紋・顔写真情報と統合され、また他の行政機関などとの情報照会・提供がなされることも懸念される。

以上のように、今回の外国人在留管理制度の改定は、外国人の人権保障や生活の便宜を高める目的のもとにつくられたものとは言いがたく、むしろ多くの立場の外国人にとって負担の大きい制度となっている。にもかかわらず、衆参両議院の審議過程において、新制度の直接の当事者である外国籍住民の意見を聴取する機会はほとんど設けられず、またそもそも法案が作成される段階においても、政府は改定案の内容を多言語化して広く広報するような措置をとらなかった。外国人人口が215万にも達するなか、「多文化共生」の推進をめざす日本にあって、当事者を無視する形で制度改変が進められていることに私たちは強く抗議する。

現在、全協は、さまざまなバックグラウンドをもつ多様な青年たちと歩みをともにしている。この新たな制度の導入は、さまざまな在留形態にある外国籍青年を一律に管理・監視する体制に組み込む一方、多様な背景を持つ青年たちをその在留形態によって分断するものであり、多くの青年が生活上の不利益を受けることは明らかである。

そのため、私たち全協は、特別永住者としても、中長期在留者としても、そして非正規なかたちで日本に滞在せざるをえない者としても、つまり当事者としてのいかなる立場からも、共生とは矛盾する在日外国人の管理・監視体制の強化に反対する。また日本国籍を有する立場としても、信仰においてつながる隣人が、さまざまな形で不利益をこうむることを看過することは出来ない。

そもそも全協の母体である在日大韓基督教会は、植民地支配の中で朝鮮半島からの移動と離散を余儀なくされた小さな信仰の群れから出発し、戦後には「外国人」として社会保障の一切の枠組みから排除されながらも、時間をかけて日本社会に差別の不当性と多文化共生の課題を訴え続けてきた。 私たちは、このような歴史的経験をかえりみながら、ディアスポラ(帰る場所を失ったもの)の苦難を今なお経験している多くの隣人と歩みを共にする「マイノリティ教会」の一員として、全ての人が安心して暮らせる世界、全ての人が「帰る場所」を奪われない世界の実現に向けて、この法案の成立に強く反対することを、ここに改めて表明する。心から平和を願うキリスト者として、平和・共生の実現に逆行するあらゆる制度の導入に、反対せざるをえないのである。

2009年7月9日 在日大韓基督教会青年会全国協議会


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