第14回 在日大韓基督教会 人権シンポジウム声明
掲載日 : [08-04-22] 照会数 : 5278
第14回 在日大韓基督教会 人権シンポジウム声明
2008年4月20~22日、在日大韓基督教会(以下、KCCJ)社会委員会、在日韓国基督教会館(KCC)、在日韓国人問題研究所(RAIK)、西南在日韓国基督教会館(西南KCC)は、第14回KCCJ人権シンポジウムを、「宣教100周年を迎えるKCCJと人権-マイノリティ教会としての使命」との主題のもと、京都・関西セミナーハウスにおいて開催した。シンポジウムには、在日大韓基督教会の関係者をはじめ、日本キリスト教協議会、外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会、日本基督教団、日本キリスト教会から、39名が参加した。
日本社会は、多くの外国籍住民が生活する多民族・多文化社会となりつつある、と言われて久しい。しかし、日本社会は真の意味での共生社会とはなっていないのが現状である。外国籍の子どもたちの教育権が助ェに保障されていないことがその一例である。また、昨年11月から実施された外国人生体情報(指紋と顔写真)の強制登録を含む入管法の改定に象徴されるように、現在、日本政府が進めている入国管理および在留管理の強化は、旧来より日本政府が進めてきた政策の延長線上にあるものであり、国家による、日本国籍者を含めた監視・管理体制穀zの一環である。それは、「安全」「安心」の必要性を訴え、危機感を煽りながら、非正規滞在者を徹底的に排除し、在留資格による外国籍住民間の分断と階層化を進める中で行なわれている。
一方で、日本の人口減少に伴う労働力不足を補うために、外国人労働者を「受け入れ」る中、国家による監視・管理体制を強化することを目的とした、外国籍住民の「社会統合」政策が国zされている。しかし、この政策は、私たちが求めてきた、外国籍住民と日本人がそれぞれの尊厳を尊重し合って生きる「共生」や人権の視点を欠いたものである。人権の視点がない統合政策は、同化政策に過ぎない。
今年2008年に宣教100周年を迎えたKCCJは、その宣教活動の初期から今日にいたるまで、マイノリティ教会の使命として、人権宣教を担ってきた。KCCJにとって、その働きは、神から与えられた人間の尊厳の回復を求めた宣教活動であった。その中で、KCCJが得てきたことは、人権宣教とは、最も弱い人たち、社会の最も弱い部分に目を向けて行う活動であり、そのような活動を行う中で、すべての人の尊厳が尊重される共生社会をつくることが、神から与えられたKCCJの使命であるということであった。
新たな時代に向けて、KCCJは、在日コリアン社会の苦難の記憶を掘り起こし、継承していかなければならない。また、丁寧な対話を行う中で、すべての人たちに居場所を提供する信仰共同体へと自らを変えていかなければならない。そして、自らのマイノリティ性についての批判的な検証を続ける中で、マイノリティ性を相対化していく必要がある。マイノリティ性とは、ある権力関係の中で周辺化された状態のことであるが、それは固定化されたものではない。民族差別、性差別、セクシュアル・マイノリティへの差別、障がい者差別と幾重にも積み重なった差別国「において、自らが抑圧する側に立つ可柏ォもあることを改めて確認した。このことは、他のマイノリティと共闘するためにも必要なことであり、とくに、日本政府による外国籍住民間の分断政策が促進される中でKCCJが真摯に受け止めなければならない課題でもある。
在日コリアンに負わされてきた差別をはじめ、すべての差別は沫ヘであり、沫ヘは憎悪の連鎖を生む。そして憎悪は、憎悪を抱く人間自身の人格を歪める。そのことを心に刻みつつ、私たちは、主イエスが示してくださったように、抑圧者も被抑圧者も、誰もが必ず変化する可柏ォがあるという「愛の意思」をもって、差別のない社会である「神の国」をこの世に実現する宣教に参与すべく、以下の課題について取り組むことをここに決意する。
1.すべての人の尊厳が尊重される多民族・多文化共生社会の実現に向けて、「外国人住民基本法」の制定運動をさらに推進する。
2.2007年11月20日に実施された改定入管法による指紋・顔写真などの生体情報の登録制度撤廃に向けた運動を展開する。
3. 「外国人雇用状況報告義務制度」の廃止と、2009年国会に上程されようとしている「外国人IC在留カード」制度の導入計画を阻止する取り組みを行う。
4.差別禁止法の制定を求めると共に、政府から独立した国内人権機関の創設を日本政府に訴えていく。
5.KCCJがこれまで培ってきた国際・地域・個教会間レベルにおけるエキュメニカルなネットワークを拡大・内実化する中で、共生社会の実現に向けて具体的な課題を担っていく。
6.以上の課題を継続的に担っていくため、人権シンポジウムを今後、定期的に開催する。
2008年4月22日
第14回KCCJ人権シンポジウム参加者一同
在日大韓基督教会(KCCJ)社会委員会
在日韓国基督教会館(KCC)
在日韓国人問題研究所(RAIK)
西南在日韓国基督教会館(西南KCC)