アジアの「平和(シャローム)」のために働く青年大使(Young Ambassadors)を育成するための研修プログラム(YAPA program)が6月12日から18日までアジアキリスト教協議会(CCA)の本部が位置するチェンマイ(タイ)にて開催された。
同プログラムにはインド、パキスタン、タイ、ミャンマー、スリランカ、カンボジア、インドネシア、フィリピン、パプアニューギニア、香港、台湾、韓国、日本(KCCJのみ)などの13カ国から28名の青年が参加した。参加した青年たちはそれぞれの国が抱える紛争や葛藤など平和が奪われている状況について発表し、各自のコンテキストの中での平和実現を模索した。
アジアの多くの国々が抱えている問題として、女性や子供、少数民族などの社会的弱者が抑圧されていながらも自らの状況を自由に表現することができないこと、表現できたとしても圧倒的な暴力によって押しつぶされるという共通点が見受けられた。一方、日本からの唯一の参加者であった筆者が「日本におけるヘイトスピーチ」について発表した際には、世界的に親切で平和なイメージのある日本でヘイトスピーチが行われているとは想像もしなかったという驚きの声が多く聞かれた。また他のアジアの国々の状況と比較し、自由な表現ができないということも問題であるが、他者を傷つける表現の自由までもが許されるということも新たな問題を生み出すという分析的な声もあった。
同プログラムでは6名の講師によって平和についての講義がなされたが、講師の一人であるスーザン・ジェイコブス氏(CCAコミュニケーション諮問委員)は平和と正義の関係を強調した。同氏は、「正義と平和は互いに切り離すことができない」とし、「平和は単純に戦争のない状況ではなく、正義が実現されたとき初めて平和が存在する」と主張した。
もう一人の講師であるアルピヌス・カンボジ博士は、平和は人間同士の関係だけでなく、地球上のあらゆる生物との間にも必要であるとした。カンポジ氏は被造物間の平和の必要性を参加者により具体的に感じさせるためにワークショップを行った。 最後に参加者たちはYAPAプログラムを通して学んだ内容を踏まえて各国でこれからどのようなアクションを起こしていけるのか、について発表し合った。また同じアジアに生きるキリスト者として協力と連帯によるエキュメニカル運動にも注力し平和と正義の実現を目指していくことを約束した。
一方、CCAは今回の参加者たちが一週間の短期研修で終わるのではなく、持続的にネットワークを形成しアジア地域の平和に寄与することを願っていると伝えた。またCCAは5年以内にこのような青年平和運動を拡大していくことを目指している。